治せる治療家、患者さんから選ばれる院、本物の手技技術
柔整・鍼灸コラム
4.痛みの質を見極める
痛みの原因を見極めるために、私たちは問診カウンセリングを徹底して行います。
そこで患者さんから得た情報(視診、触診)をもとに、知識、経験から、何が痛みの原因なのかを見極め、患部の病態を把握しなければなりません。
つまり、知識や経験は大切ですが、その前に、患者さんに質問をして必要な情報収集をする「問診力」が重要なのです。
私の経験談ですが、骨肉腫や骨転移癌なども見つけたことがあります。通常の痛みと何かが違うのです。
痛みの訴えの事例その1
例えば骨肉腫では、痛みの訴え方や患部の腫れ具合がどうも腑に落ちませんでした。
下腿部の痛みを訴え来院された10才の男の子の例です。
コンパートメントやアキレス、腓腹筋、ヒラメ筋に問題がないにもかかわらず炎症症状がありました。
施術者である自分が「判断ができない=治せない」疾患なので、専門医に紹介状を書きました。
翌日、お母さんが来院され「息子は入院し骨切除手術を受けるそうで発見が遅ければ下腿の切断になるところでした。ありがとうございました」と、診断書のコピーと一緒にお礼を伝えに来てくれました。
痛みの訴えの事例その2
骨転移癌では、歩行の仕方がおかしかったです。
まだ8才の子供でしたが、おじいちゃんに連れられて、「先生、ウチの孫なんだけどさ、こいつ歩き方がおかしいし、腰が痛いって言うんで診てよ!腰が悪いのは遺伝かな、あはは!」みたいな感じでした。
肉腫だと思いましたが、骨盤部の炎症が強く、発生機序も明確ではありませんでした。
小児のため電療機器も使用できないので、「ごめんなさい。なんで痛いか分からないので、整形外科さんに行ってください」と伝えました。
それから1週間くらい経過した頃、おじいちゃんが癌だったと知らせに来院してくれました。
残念ながら病気の進行が早く、それから2週間くらいで亡くなりました。
医療従事者として患者さんを診る覚悟
私は、これらの体験から「医療従事者として患者さんを診る覚悟」を再確認すると同時に、専門疾患以外の身体の勉強をするようになりました。
これから施術者として働くみなさんにも、その「覚悟」を持ってほしいのです。
患者さんの負傷原因が明確で、一般外傷症状があっても、捻挫や骨折はなく、ほかの病気である可能性もあるため、しっかりと目の前にいる患者さんを診ていくこと、そして患者さんの身体を預かって自分が責任を負う覚悟を持って、白衣を着て欲しいと考えています。
私たち柔道整復師の業務範囲外であれば、専門医へ紹介状を書いて転医してもらえばいいだけです。
よく分からないのに、ただ揉むだけ、いつまでも自院で診ているなど、その瞬間が患者さんの人生に関わる大事なターニングポイントかもしれません。
私たちに診断権はありません。最終的に判断するのはドクターです。
来院されるのが、日常生活の外傷の患者さんだけとは限りません。
患者さんが痛いと訴える原因や背景には、内科疾患や重度障害、リハビリ、病後の予後不良などがあり、ドクターから確定診断され、後療依頼を受けて初めて治療方針などを決め、実際に治療へと進めることができる場合もあることを知っておいてください。